「介護退職」

楡周平さんの「介護退職」という本を読んだ。

総合家電メーカーで部長職にある会社員・唐木が、母親の介護問題をきっかけに生き方の転換を余儀なくされる。母親は秋田の過疎の町で一人暮らしをしていたが、雪かきのときに骨折してしまう。葛藤の末、東京にある唐木の自宅に引き取るが、いわゆる「企業戦士」である唐木は、結局は妻に全面的に頼らざるを得ない。中学受験生も抱え、妻も介護疲れで倒れてしまう。
社運を賭けたプロジェクトのリーダーであり、この成功によっては役員の椅子も手に入るであろうポジションにいるのに、唐木は、厳しい決断を迫られることになる。

…と、まぁ、こんなストーリー。

Amazonでは、残念ながら厳しいコメントが目立った。
実際、唐木が介護に向き合ったかどうかというと、実は奥さんに丸投げ状態。こりゃー奥さん、倒れるわ。「介護退職」というタイトルに違和感を持つ人がいてもおかしくない。この小説、奥さんの立場から書いた続編が読みたいと思ったのは私だけではあるまい。

もっとも、働き盛りの男性がこのような状況に追い込まれたら、妻(専業主婦か、自分より収入の低い場合に限るが、それがほとんどだろう)にお願いするしかないのは事実だろう。このケースは、妻がくも膜下出血を起こして倒れたけれど後遺症もなく…という、まさに「不幸中の幸い」というものだったが、これで妻に後遺症が残っていたら。いや、体が悲鳴を上げる前に精神的に参ってしまったら。あとは家庭崩壊だっただろう。

そう、唐木の場合は、幸運なパターンであった。
頼れる叔母がいた。弟夫婦がいた。そして日頃の働きぶりを評価してくれる上司がいた。
介護される母も、認知症とはいえ、徘徊が出ていなかった(骨折して動けなかったため)
何か一つ欠けても、泥沼状態だった。

でも、日本の至るところで、この「泥沼状態」にはまりこむ人はいるのだ。
最後の方で、閑職に飛ばされたときの上司である吉井が「いつ誰が、君のような状況に陥っても不思議じゃないというのに、そうした人たちを支援するシステムはおざなりになっている」と語るが、その通りなんだよね。

せめて拙著で書いた「コマギレ勤務」がもっともっと普及してほしい、その人がいないと仕事が回らないということがないようにと、願わずにいられない。
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by miki_renge | 2013-04-28 10:52 | 雇用・人事
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