「懲戒解雇」

古い本(初版は1985年)だが、高杉良の「懲戒解雇」を読んだ。
あるエリート課長が、常務と対立し(というより常務の不正を暴こうとし)7、8年前のちょっとした不祥事(交際費を私的に使った、など)により懲戒解雇を命じられるが、それに立ち向かっていく、というストーリーだ。
話の中で、この社員の親友である人事課長が、「古い話だし、せいぜい始末書相当だ」と反発するが、常務から役員昇進のエサをぶら下げられた人事部長や、常務の経営上の失敗を追及できないその他役員達の迷走により、事態はどんどん泥沼化していく・・・
さて、「懲戒解雇」。言うまでもなく、一番重い処分だ。
よって、使用者側も、懲戒解雇を行うときは、より慎重にならなければならない。
具体的には手続の正当性(就業規則に記されているかどうか)、処分内容の均衡性(同一事由に対する処分の種類・程度は、同じであるべき)に留意し、さらに、処分される者には弁明の機会を与えるべきとされている。
この小説の「懲戒解雇」の場合、一応、就業規則には解雇について記述がある。しかし、処分内容は、人事課長が始末書相当だと主張するくらいであるから、懲戒解雇とは厳しい。また、弁明の機会はほとんど与えられていないのも問題である。
実際にこのような話があったら、間違いなく懲戒解雇は無効だろう。

ただ、解説で佐高信氏が書いているが、このような事件はあるだろう。実際、この小説も、とある事件をモデルに書かれているそうだ。
また、「依願退職に従わないなら懲戒解雇するぞ」と脅され、退職せざるを得ないという場合もあるだろう。
個別労働紛争に係る相談内容において、「解雇」に関するものは3割程度というデータがあるそうだが、不況、経営不振を反映しているものであろうか。

一点だけ、この小説に「時代の違い」を感じたこと。
主人公は、自らの名誉のために、会社とたたかった。
今なら、どちらかと言えば、自分と家族の生活のためにたたかうことになるだろう。
マズローの欲求5段階説でいえば、昔はより高次の欲求、今は低次の欲求で人は動く、動かざるを得ない。
しんどいところだ。
[PR]
by miki_renge | 2004-09-11 21:41 | 雇用・人事
<< 「便箋」は時代遅れ? 登録する? >>